「もんじゅ」での出来事
日本の高速増殖炉「もんじゅ」はナトリウム漏れ以降、さまざまなトラブルが続いている。最近も燃料交換装置が原子炉容器内に落下したトラブルに関連してショッキングな事実が二つ判明した。
ひとつは装置を管理する燃料環境課長が「もんじゅ」のある敦賀市内の山中で自殺していたこと。もうひとつは所管官庁である文部科学省の笹木副大臣が装置を製作した東芝に対して装置を吊る部分に欠陥があったとして損害賠償を求める意向を示したことだ。
復旧には17億5千万円かかるという。電力会社が原発のトラブルでメーカーに損害賠償を求めることは珍しいことだが、今回は国が税金を使ってやった仕事。民主党政権としては、けじめをつけなくてはと考えたのだろう。
超民主主義
ジャック・アタリはフランスの思想家でサルコジ大統領の知恵袋。彼の書いた「21世紀の歴史」には資本主義がこのままとんでもない市場経済に全世界を巻き込み、紛争がおき、その後ボランティアのように他人を愛することを生きる喜びの原点とする思想のエリートたちが出てユートピアを作ると予想している。
150年前の日本の幕末は、すでにそのような社会に近づいていた。封建時代とはいえ、鎖国のまま貨幣経済が発達したので、ミニ版ではあるが、市場経済がいきつくところまで行き着いていたし、講というマイクロファイナンスもあった。資源のリサイクルも有名であるし、相互扶助の精神が満ち溢れた社会であった。
なによりも人々は分に応じて働き、その働きを苦役とせず、嬉々として生活していた。このへんの事情は幕末に日本を旅行したイスラマ・バードなどが驚くべきこととして記録している。アタリが書いているようなことは既にいくつか実現しかかっていたのだ。
150年前に日本人は黒船で開国したが、その時点で150年前の社会である欧米社会の真似をしなくてはならなかったのだから、さぞかし苦痛であったに違いない。もし、今黒船が来航しそれにジャック・アタリが乗っていたら仰天したに違いない。
間違った常識
世の中には常識として信じられていることが間違っていることが多い。日本は貿易立国ではなく、貿易に依存しているのはGDPの僅か1割台だ。中東などから大量に輸入している石油代金はそのまた半分にも満たない。
地方に行っても農村、漁村と呼べる所は存在しない。既に各市町村の第一次産業従事者(農林水産業)は全就業人口の1割しかないからだ。田舎でも6割の人はサービス業など第三次産業に勤めている。
市場に出回っているヒラメの90パーセント以上が養殖ものだ。風力やソーラーなど自然エネルギーによる発電は全体の1パーセントにもなっていない。
こうした常識の誤りは、大人が子供の頃に学校で教わったことをそのまま覚えていることや、マスコミや学校の怠慢によることが多い。