超民主主義

 ジャック・アタリはフランスの思想家でサルコジ大統領の知恵袋。彼の書いた「21世紀の歴史」には資本主義がこのままとんでもない市場経済に全世界を巻き込み、紛争がおき、その後ボランティアのように他人を愛することを生きる喜びの原点とする思想のエリートたちが出てユートピアを作ると予想している。

 150年前の日本の幕末は、すでにそのような社会に近づいていた。封建時代とはいえ、鎖国のまま貨幣経済が発達したので、ミニ版ではあるが、市場経済がいきつくところまで行き着いていたし、講というマイクロファイナンスもあった。資源のリサイクルも有名であるし、相互扶助の精神が満ち溢れた社会であった。

 なによりも人々は分に応じて働き、その働きを苦役とせず、嬉々として生活していた。このへんの事情は幕末に日本を旅行したイスラマ・バードなどが驚くべきこととして記録している。アタリが書いているようなことは既にいくつか実現しかかっていたのだ。

 150年前に日本人は黒船で開国したが、その時点で150年前の社会である欧米社会の真似をしなくてはならなかったのだから、さぞかし苦痛であったに違いない。もし、今黒船が来航しそれにジャック・アタリが乗っていたら仰天したに違いない。