日本列島改造論

 田中角栄日本列島改造論により、新幹線や高速道路、それに港湾などが整備され日本国内に大動脈が通り、地方にも産業振興の機会が作られた。これによって日本は人の移動や物流面で格段に効率が良い国になった。

 今、中国やブラジルといった新興国はちょうど当時の日本のように大動脈を通して効率化に向かっている。日本はその後、東京などの大都市に人口が集中し、大企業のほとんどが本社を東京におくようになっている。

 地方の没落は明らかであり、もう一度、日本列島を改造して国土利用がバランスの取れたものにする必要がある。そのためには、地方における無理な都市開発を止め、コンパクトな街にすることが望まれる。

これからの原子力開発

 アメリカでは100基の原発がこれから寿命を迎えようとしている。日本でも40年を越えて運転をする原発がどんどん増えている。これらの原発を廃止して新たな原発を建設する、いわゆるリプレースの必要が毎年着実に高まっている。

 原発の運転による使用済燃料をこれ以上原発敷地内に貯蔵することも限界が迫っている。原発の運営に関しても国の財政のように収支バランスが必要。

 プルトニウムの消費や放射性廃棄物の処理処分の進み具合を原発の運転とペース的にリンクさせる必要がある。これまでのように問題解決の先延ばしをこれ以上続けてはならない。

農業の壊滅

 農協などはTPP参加問題で日本の農業が壊滅すると反対するが、野菜や花は現在でも関税がそれぞれ3パーセント、0パーセントだ。それでも野菜や花は中国を始め海外に輸出が行われている。

 リンゴ、サクランボ、桃、ブドウ、イチゴなど東南アジアの富裕層には日本の果物は大人気だ。逆にサクランボやイチゴについてはあまりに高級化してデパートなどで売っているイチゴは庶民の手の届かない値段になっている。

 昔は輸入していたアスパラもキウイもマンゴーも輸入品に対抗して立派に栽培出来ている。高い関税で護られている米などが、自由化すれば壊滅すると言っているが、野菜や果物、花が大丈夫なのはどのように説明するのか。

 円高の今、農業法人アメリカ進出をさせる、国内ではブランド米に集中するなどグローバルな戦略を考えることが必要だ。

処分場のイメージ

 各地でゴミの処分場の建設地を見つけることが難航している。ましてや放射性廃棄物処分場は国や推進機関が10年以上やっているが、まだ見通しが立たない。

 原発から出る高レベル放射性廃棄物の処分場がどのようなものか一般の人にはイメージが湧かないのも原因のひとつだ。マンションを買うにも分譲地に家を求めるにもパンフレットでイメージを膨らませることが行われている。

 どんなマンションにもモデルルームが作られる。高レベル放射性廃棄物処分場についても実際にモデルを造って見せることが良い。もちろん実際に放射性廃棄物は入れない。

 それはたぶんおしゃれな公園のようなものになるはず。百聞は一見にしかずというが、大体の大きさや外観を知るのは理解の第一歩だ。

特別に長い鎖

 どんな産業でも原材料の調達というフロントエンド、廃棄物の処分というバックエンドを持っている。自動車産業では部品の調達、それを作るための部品メーカーによる原材料の調達がフロントエンド、生産に伴うゴミの廃棄、廃車後のリサイクルや不用品の廃棄がバックエンドにあたる。

 原子力の場合はウラン燃料の調達、交換部品や消耗品などの調達があり、使用済燃料のリサイクル、放射性廃棄物の処理処分などがバックエンドと呼ばれている。

 核燃料の製作は鉱山からはじまり濃縮転換という長くて複雑な工程があり、放射性廃棄物は最終的に深い穴を地面に掘って埋め管理するというバックエンドが存在する。

 濃縮段階では核兵器への転用というやっかいな問題があり、放射性廃棄物には何百年、何千年も放射能が減衰しない問題があり、これらが原子力を特別な産業として扱わざるを得ないものにしている。

インフラ輸出

 先進国は原発、水道、新幹線などインフラを途上国に輸出しようとやっきになっている。途上国は先進国間の競争に乗じて有利な条件を獲得しようとする。

 韓国はUAEの原発に関して土地の買収から60年にわたる運営も含めて条件を飲んで契約に漕ぎ着けたが、これには韓国国内でも批判が出ている。日本はかつてイランの石油化学コンビナート建設で三井物産グループなどがひどい目に遭った。

 その教訓を忘れずにあまりにも非常識な条件のものからは手を引いてしかるべきだ。マスコミは日本メーカーが機器の提供にとどまって下請から脱せないなどと煽るが、無責任そのものだ。

いつでもハワイ

最近流行りの外断熱、床暖房で家を建てた人が「ウチは冬でもハワイアン。夏は軽井沢の涼しさ」と言うが、そんな家に住んでいると心身はどうなるのだろうか。

無菌室で育った赤ちゃんのような状態になり、そこから出られなくなるのではないか心配だ。歳をとると余りに厳しい寒さ暑さも困るが、かといって季節感のない生活も味気ない。

日本は春夏秋冬、季節の移り変わりが感じられ、それが短歌、俳句、日本画、料理などさまざまな文化を育んできた。いつでもハワイではそんな楽しみも感じられない。