江戸の冬

 江戸時代を賛美する人が増えている。マスコミも江戸時代を環境とマッチした素晴らしい社会と持ち上げるが、実態はそんなに過ごしやすいものではなかったはずだ。

 浮世絵師の歌川広重が描いた江戸や東海道の版画には、冬空にふんどしで半纏一枚の人足が籠を担いだり焚き火を囲んだりしている。殿様でさえ、冬は障子で囲った部屋で火鉢に手をかざすくらいのことしか暖房がなく、庶民は今の北朝鮮並みの生活を送っていた。

 そのなごりはドラマ「おしん」の描くかつての日本の山村の生活に見られる。栄養状態も今よりははるかに悪かった江戸の人々がよく冬の寒さに耐えて生活していたと思う。江戸時代の人々は現代人より春の到来を強く心待ちしていたに違いない。