競争と独占

 かつてIAEAで日本の原子力の保守体制に関するプレゼンテーションをしたときに、「何故日本の電力会社は事故の隠蔽やデータの改竄が多いのか。どうやったら防げるのか」という質問を受けたことがある。

 ちょうど電力会社の不祥事が続いて発電所の多くが停止に追い込まれた時代だった。「それがわかればIAEAは二つ目のノーベル賞がもらえるくらい難しい質問だ」とかわしたが、不祥事の起きる体制とは二つの場合がある。

 一つは電力会社間の競争があまりにも激しい場合。競争に打ち勝つためにどうしても無理をするし、少々のことには目をつぶる。それが段々に大胆に行われついには会社ぐるみの犯罪を犯すようになる。

 二つ目は独占状態が続き、社員や関係者がその既得権を守ろうとしたり、自分達の使命に対する世間の無理解を嘆く場合。社員にとって一番怖いのは国家権力なり消費者の声で独占状態や開発計画を取り消されること。

 不祥事の原因として供給力不足や事故による大停電、センセーショナルな報道などがあり、それを避けるためには隠蔽工作も辞さなくなる。社内には供給責任や国家的使命が強調され、そのためには犠牲もいとわない風潮が存在するようになる。日本の電力会社の場合は後者のケースだったのではないかと思われる。