日本庭園の謎

 人間にはもともと自然を征服しようとする性質がある。庭を造る際、周りを囲い、気にいった木を植える。雑草を抜き芝生にして殺虫剤を噴霧する。木にとって害のある虫は排除する。山に見立てた石なども配置し、ちょうどキャンバスに絵を描くように自分の思うようなに庭にしようとする。

 「雑草という名の植物はない」と皇居の吹き上げ御所の庭を手付かずの自然のままにしておかれた昭和天皇。日本人が庭園を自然の風景になぞらえ、小宇宙ともいうべき空間を造ったその心は、本当の野山の自然は手をつけるべきところではないという昭和天皇の考えと同じだ。日本庭園は人間の自然を征服したいという本能を満足させ、自然破壊を防ぐための知恵だ。