蒸気機関車と原発

 堺屋太一蒸気機関車が初めて日本に登場した時、全国各地で猛烈に反対運動があったと書いている。そのため地方では駅が街の中心から随分離れた場所にあることが多い。煙を吐くので沿線が火事になるとか、人や動物に危険だとか言われたようだ。汽車が便利であることが人々に浸透するにつれて反対運動はすっかり収まった。堺屋氏は原発も同じように受け入れられると予想しているが、そうだろうか。

 蒸気機関車と飛行機は似たようなものだが、原発は違う。蒸気機関車の事故は被害の範囲が限定的だが、原発の場合は規模も範囲もはるかに大きい。また、放射能は長年にわたって存在する。デメリットに関しては放射能の実害はほとんどなくとも、人々に恐怖感を抱かせる点では蒸気機関車とは比べものにならない。メリットでも原発が人々に提供するのは電気だが、これは火力発電や水力発電でも同じ電気が提供出来る。

 人々は原子力発電が環境やエネルギーセキュリティー面で良いことは直接的には感じることは少ない。出来るとすれば、価格面で火力より原発の方が安いので、原発から電気を買いたい人には安く提供するようにすれば良いが実現は難しいだろう。こう考えると、現在の原発立地地域が良く受け入れてくれたと驚くとともに、原発が国民の大多数に支持されるのには、まだ相当長期間掛かると考えた方が良い。