生活の豊かさと開発

 人が自然の中に人工物を作り、人口を増やして、その生活を豊かにしていくことが開発だ。しかし、この「豊かにする」がくせもの。自然を破壊しすぎて人工物ばかりになれば豊かさも感じなくなる。人は現代社会の強いストレスを自然で癒しているからだ。家を建てても庭をつくり、家の中まで観葉植物を置こうとする。自然林を切って、杉などを植林する。牧畜のために森を牧草地に変える。

 都市の成長は周辺の自然を次々と失わせる。山間部や海岸部の問題は観光開発。ゴルフ場、スキー場、リゾートホテルなど。工業団地など。郊外型店舗。開発は主に経済的理由で行われる。資本の論理に全面的に依存すれば、際限の無い自然破壊につながる。工場、事務所、商業施設、住居、道路、鉄道、ダム、基地などを造らなければ社会が成り立っていかないが、同時に自然保護規制も行われなければならない。

 従来、この規制の理由が農地の確保や天然記念物、史跡の保護、既に指定された公園くらいで今の知識や価値観からすると不完全なものだ。自然が提供する良い空気、良い水、良い景観、静けさ、動植物などの価値をもう一度洗いなおして規制の根拠をしっかりする必要がある。