点検方法

 モーターやポンプといった回転機器を組み立てて芯がぶれないように調整するには高度な技術が必要だ。上手く調整すれば、ずっと長時間止めずに安定して回転させることが可能だ。

 そのため海外の原発では上手く回転している機器はそのまま運転しつづけることをしている。ところが日本の原発では毎年のように回転機器を止めて、その都度分解し内部点検後に再び組み立てるという作業を繰り返している。

 一定の時間がたてば必ず内部の点検をするという不合理。分解組立をしたことで、内部に異物が入ったり配管のつなぎが甘くなったりとかえって調子が悪くなる危険性もある。

 これでメリットを受けているのは分解組立工事をする工事会社だけだ。地元も分解組立工事が少なくなれば仕事減ると反発しているが、原発の安全から言えば問題のあるやり方をしているのだ。

電力料金と税金の負担

 日本で原発を建設する際着工までに長い期間が掛り、巨額の補償金や寄付金が支払われている。運転開始してからも欧米に比べて稼働率が低く、どれほど消費者が料金を余分に負担してきたか。

 原発を停めて壊す場合も放射性廃棄物の処分に係る規制が必要以上に厳しいものを採用しているため、このコストが莫大なものになっているが、コストはすべて電力料金で賄われている。

 電力料金に上乗せされて徴収されている電源開発促進税は原発建設を促進するために地方自治体に配られている。不況が長引き民間の給与水準は下がったが、役人や電力会社の給与水準は相変わらず高い。

 これも国民が負担している。これらが適正なものであるかは誰もチェックしていないし、チェックのしようもない。

 監督官庁や電力会社はミスや怠慢でトラブルを起こしたり、地元の要求を呑んだりしても、ちっとも痛みを感じることはない仕組みになっている。

船舶の電動化

 重油価格の高騰で漁業が採算を取れずに困っているが、そこへ朗報だ。福井県の産業支援センターが充電式のリチウムイオン電池を動力とする遊覧船を造り湖の自然環境を保全する取り組みの一環として同県美浜町久々子湖で運航実験を開始した。

 リチウムイオン電池による遊覧船運航は世界初。遊覧船は9トンで12人乗り。リチウムイオン電池4体、モーター2基を搭載している。1時間充電すれば約40キロ走り、速度は現在、久々子湖を遊覧している船と同じだ。

 年間の二酸化炭素(CO2)排出量はディーゼル船とくらべると百分の一。有害物質も排出しない。搭載したリチウムイオン電池は、電気自動車などに使われているマンガン系でなく、リン酸鉄リチウムイオン電池

 電気容量が約1・5倍で、寿命が長く、安全性に優れ、コストも3分の2以下だ。さまざまな用途の船舶に採用されればよい。

あきれた言い分

 
 島根原発で大量の機器の点検洩れが発覚した。あれほど原発の管理ミスが問題になったあとだっただけに関係者にショックが走り、地元住民も呆れた。他の電力会社の原発も再点検したらやはり同じようなミスがあったというおまけまでついた。

 なんでもコンピュータで管理される時代、いくら機器や部品の点数が多いといっても、どうしていつまでもおそまつな点検ミスがなくならないのか。このトラブルで驚いたのは保安院という原発の規制をする役所のこと。

 大量の点検は実務を原子力安全基盤機構(JENES)に任せているが、今回、自ら反省の弁はなく、JENESに対して「何を検査しているのか」と怒るばかりだった。保安院こそ国民から「何をしているのか」と怒られるべきだ。

捨てられる食材

 食料の流通・消費構造には大きな無駄がある。先進国ではスーパーやコンビニの売れ残りは消費者に見えないところで速やかに行われている。

 生産者も市場で売りにくいものは出荷せず捨てている。世界では食料の30パーセントが、消費者の胃袋に入る途中で失われているか、ゴミとして捨てられている。

 食料不足が深刻な途上国では、食料を保存する倉庫や迅速に輸送する交通手段などのインフラ不足が、せっかく収穫した食料の多くを無駄にしてしまう大きな要因になっている。

 鉄道や道路、それに貯蔵施設などのインフラ整備が途上国にとって最優先課題でもあり、先進国のビジネスチャンスでもある。

 原子力不安を作り上げたもの

 日本人はいまだに原子力に対して不安感を持っている。その不安感は長い期間を経ていくつかの事件、事故で積み上げられたものだ。まず原爆や第五福竜丸乗組員の被爆によるケロイド写真。これは誰もが教科書で子供のころに強い印象を持ったはず。

 続いて原子力船むつの放射線漏洩問題、敦賀発電所放射能漏洩事故、東京電力福島第二発電所のポンプ破壊事故、もんじゅのナトリウム漏洩、死者を出したJCO事故、旧ソ連チェルノブイリ事故、東京電力を始めとする各電力の偽装、隠蔽などの不正事件。

 中越沖地震による柏崎刈羽原発の被災。不安は事故を起した当事者や組織が自己利益のために公衆の安全を犠牲にするとの不信が基になっており、原子力安全神話との落差が大きかったことも強い印象を植え付けた。

原子力理解活動

 原子力に関してアンケート調査をやると住民が一番信頼する情報源としてはマスコミであり、ついで地方自治体の発表である。国はこれより信頼されず、最も信頼度の低いのが電気事業者が出す情報だ。

 ところが住民に対する原子力理解活動を一番力を入れて展開しているのが電気事業者。テレビにも毎日のようにコマーシャルを入れて同じような内容を繰り返し伝えている。

 信頼をするマスコミは事故やトラブルのときにしか伝えないし、自治体も国も原子力理解活動には目立ったものはない。住民が信頼を置いている地元自治体は電気事業者に任せてばかりいないで、もっと積極的に原子力理解活動をするべきではないのか。