原子力不安を作り上げたもの

 日本人はいまだに原子力に対して不安感を持っている。その不安感は長い期間を経ていくつかの事件、事故で積み上げられたものだ。まず原爆や第五福竜丸乗組員の被爆によるケロイド写真。これは誰もが教科書で子供のころに強い印象を持ったはず。

 続いて原子力船むつの放射線漏洩問題、敦賀発電所放射能漏洩事故、東京電力福島第二発電所のポンプ破壊事故、もんじゅのナトリウム漏洩、死者を出したJCO事故、旧ソ連チェルノブイリ事故、東京電力を始めとする各電力の偽装、隠蔽などの不正事件。

 中越沖地震による柏崎刈羽原発の被災。不安は事故を起した当事者や組織が自己利益のために公衆の安全を犠牲にするとの不信が基になっており、原子力安全神話との落差が大きかったことも強い印象を植え付けた。