舟歌

 八代亜紀のヒット曲「舟歌」、まだ高度成長の余韻が漂う昭和54年に流行したこの曲の歌詞には日本人の誰もが共感するものがある。

 悲しげなオーボエのイントロに続いて「お酒はぬるめの燗がいい、肴はあぶった烏賊でいい、女は無口な人がいい、灯りは…」と始まり、人生をしみじみ味わえと歌詞は訴える。

 次から次へと新しいもの、多くのものを欲しがるなと諌めている。経済成長や発展に取り残されたものたちが、負け惜しみを言っているようでもあるが、浮ついた世間を批判しているようにも思える。

 作詞家阿久悠の歌詞はその後半世紀にもわたって世の中の変化についていけない人々の心をしっかり捉え続けている。