カナカナ

 陽が傾くとともにカナカナ(ひぐらしセミ)が鳴きはじめ、その数も増えていつ終わるともなく鳴き続ける。杉田久女の「谺して山ほととぎすほしいまま」の句のほととぎすのようにカナカナの鳴き声も傍若無人だ。あたりが暗くなり天に月が昇ってしまうといつのまにかカナカナの鳴かなくなっているのに気づく。

 虫の鳴き声を雑音として捉えないのは日本人だけで、遺伝的に脳のシステムが違うことが原因らしいが、あのカナカナの鳴き声を聞くと、なんともいえないせつなさが感じられるのも日本人だけなのだろうか。