江戸の買いかぶり

 エコブームに乗って江戸のリサイクル社会を賞賛する意見が溢れている。江戸時代は封建社会言論の自由、移動の自由はなく、職業の自由もなかった。拷問や打ち首などの刑罰、飢饉、天災による大量死もあった。着るものにしても浮世絵を見ると職人は冬でもせいぜい半纏一枚。ふんどし一丁の人足もいた。家も長屋でプライバシーなど守れない。物資は国内で回す以外なく、古着や紙の使いまわしは当たり前、寺社などの大規模建築も移設が多かった。

 江戸のリサイクルや質素な生活はやむを得ずやってきた知恵であり、外国から物資や商品が入ってくるとたちまちこれは崩れた。現代人が感心するさまざまな工夫はエコ思想によるものではなく、厳しい制約の中から産まれてきたものだということを知っておく必要がある。